当時20代後半でバリバリ働いていた私のもとに、大学時代の友人から結婚式および披露宴の招待状が届きました。
ちょうどその頃は友人、親類や会社の同期の結婚ラッシュ。
正直「またか」「祝うばかりでご祝儀として金がドンドン消えていくなあ」くらいにしか思えず、仕事も忙しい時期だったこともあり、断ろうかと考えていました。
ガーデンウェディング ロケーションは最高だった!
「なんだ、ガーデンウェディングって? 庭で結婚式をやるのか?」と不思議に思った私は知人女性に尋ねました。
その当時は現在ほどインターネットが普及しておらず、「ググる」なんてことは一部のパソコンマニアだけのもので、一般的ではなかったのです。
またその知人女性は結婚式マニアとでも言えばいいのか、とにかく結婚式に参加したい人で、一月に3~5件の結婚式に出席するほどの、ある意味プロだったのです。
そんなに参加している理由を聞いてみたことがありましたが、
「自分で挙げられるとは思えないから」
そこは聞かなかったことにして、ひとまずガーデンウェディングの詳細について教えてもらいました。
外国映画や洋楽(特にブリティッシュロック)が好きだった私は英国感あふれるその様式美に俄然興味が湧き、なけなしのお祝い金をはたいて参加することにしたのです。
当日、最寄り駅に集合した出席者一同は、送迎バスが来るのを待っていました。
思えばこの時点ですでにヤバそうな雰囲気があったわけですが、初のガーデンウェディングに浮かれていた私は到底気づかなかったでしょう。
しかもホテルか何かの少し広い庭園をイメージしていたのに対して、駅から送迎バスで行くということは、相当本格的なガーデンなのかもしれない、と期待感が膨れてすらいたのです。
間もなくバスが到着し、出席者が乗り込みました。
駅前から繁華街、市街地とドンドン進むにつれて、いわゆるカントリーサイド、田園風景が広がってきました。
やがて到着したのは本当に周りに何もない、「なぜこんなところに?」というような森の中の教会とその庭園でした。
ファンタジー感満載のその絵面に出席者一同は「素敵!」と歓声をあげていました。
式自体は教会の中で厳かに執り行われました。
特にこの時点では何も問題はなかった。
ところが、油断していたのは開始時刻。
式が始まったのが午後3時だったのです。
参加前は、前日の仕事が遅いから助かるなぁくらいにか考えていませんでしたが、披露宴の時間にはもう夕方になるはずです。
事実、式終了後、庭園での野外パーティーが始まったのは午後5時を過ぎた頃。
初夏の夕方、森の中ですから暑さはなくちょうどいい塩梅。
ところが、照明替わりの大きな投光器をつけた途端、事態は一変したのです。
ガーデンウェディングの最中大量の虫が!
大きな羽音とともに現れたのは大量の虫...。
蚊やハエ、アブから、見たこともないような色をした蛾のようなもの、甲虫類。
都会(というほどでもないですが)で暮らしている私たちには相当の恐怖、不快感が伴いました。
当然、当事者である新郎や新婦もそうでした。
特に新婦さんは虫が大の苦手らしく、パーティーが始まるやいなや、すぐに教会の中に雲隠れ。
新郎もご機嫌伺いで行ったり来たり。
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ガーデンウェディング中だけでなく帰りもゲストを置き去りに、、、
他県の森の中という非日常が後押ししたのか、私は少し飲み過ぎてしまいました。
そしてあろうことか泥酔し寝てしまったのです。
目を覚ましたときには周りに数人しかおらず、教会に行くも誰もいません。
どうやら送迎バスに置いてけぼりをくってしまったようでした。
乗車人数を確認し点呼してから出発するもの、という常識はどうやら通用しなかったようです。
また当時は携帯電話もさほど普及しておらず、持っていたとしても森の中ですから電波が届くはずもありません。
連絡手段は皆無でした。
取り残された私たち数人はその場に残っていたわずかな残り物の料理と、こちらはふんだんにあった酒を持って教会の中へ移動しました。
さすがに森の中で一晩を過ごす度胸はありません。
初夏ですが森の中なので暑くはなく、また我慢できないほど寒くもなかったのが不幸中の幸い。
酔っ払っていたことも手伝って、とりあえずは過ごせました。
しかし問題は固いベンチ以外寝る場所がなかったということです。
翌朝、さすがに私たちがいないことに気がついた人がいたのでしょう。
送迎バスが早い段階で来てくれました。
新郎とその両親も同乗しており、平謝り状態でした。
その日は休みだし予定もなかったので特に問題はなく、「やってくれたな」と軽口を叩いて終わりにしました。
しかし後から聞いたところによるとこの一件でのさまざまな不手際でまもなく離婚してしまったということでした...。
ガーデンウェディング自体は新婦の発案だったようですが、全てを新郎のせいにされてしまったそうです。
森の中の固いベンチで一晩過ごしたというのが最悪の経験でした。
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